スマイリー

「答辞お疲れさん」



「どうだった?わざとつまんなく書いてやったんだけど。日下部のヤツが白々しく頼んできてさ。ほんと、どのツラ下げてって感じ」



「あぁ、道理で」



「道理で眠気を誘う内容の目白押しだと思った?」



「当たり。実際寝てたし」



クスクスと笑う有華の顔を見てると、今までのいざこざがまるでなかったことになっているような気になる。



しかし、数週間前に進が進路のことで有華を詰問して怒らせ、そのあとさらに、駅の改札でまさに茶番劇と言っても過言ではないような仕様のない発言をぶちかましてしまったことは、ごまかしようも揉み消しようもない真実だ。



それをことあるごとに思い出しては、どうして、どうしてと、後悔しか出てこないのもまた事実。



単純に考えれば、今こうして普通にしゃべっている光景は実現するはずがない代物なのだ。



そんな代物が、いま現実になってしまっているのは有華の人徳か、互いにあの出来事に触れづらいせいか。



どちらにしろ有華は自分を探していたらしいし、ここで会話が成り立つことは有華の望みであるのかもしれない。



「さっき小林に会ったよ」



「小林?あぁ、沙優のね」



「大崎が俺を探してるって、沙優ちゃんに聞いたらしい」



「え、あたしそんなこと言ってない」



少し驚いた顔をして、有華は首をかしげた。まるで覚えがないような表情だった。



「小林に会ってないか?ついさっきあいつ昇降口から出てきたと思うんだけど」



「あたしあの子の顔、よく知らないもん」



進は少々思考をめぐらせた。



「大崎は、ここでなにやってたの」



「美紅が用事あるから昇降口で待っててって」



なるほど、読めてきた。



「ね、多分だけどさ」



自販機の前まで移動して、振り返りざまに有華が口を開く。



「図られた?あたしたち」



「そのようだな」



進も苦笑いを隠せないまま、自販機の前まで移動して有華の隣に立った。