スマイリー

頭に浮かんだ疑問詞を、とりあえずは目の前の淳也にぶつける。



「いつ」



「ついさっきです」



「どこで」



「不明です」



「どうして」



「不明です」



役目を済ませたらしい淳也は、さっさと帰ろうとする。



「他に何か言ってなかったか、沙優ちゃんは」



「全くもって、何も」



憎たらしいほど整った顔立ちをかけらも崩すことなく、淳也は我関せずの口調を守り抜く。



「…まぁいいや。わざわざサンキュー」



「いえ。それじゃ、お元気で」



そう言ってバスケ部1年生エースは右手で軽く合図をすると、西門の方へ歩いていった。



その背中を眺めながら、進は乾いた地面に座り込んで思案した。



有華が自分を探している。



「まだ学校にいるのかな」



淳也が沙優から伝言を受け取ったのがついさっきだから、その可能性はある。



「昇降口で待ってれば、まず会えるな」



下校する生徒もまばらになった今の時間なら、ここから昇降口を見ているだけでも有華を見つけるのはそう難しくない。



「…あれ?」



十何メートルか離れた場所に見える昇降口の扉にくっつくように設置されている自動販売機の陰で、何かが動くのが確かに見えた。



「小林のやつ…わざとか」



生意気な後輩に腹を立てながら、進は素早く立ち上がって靴を手に持ち、調理室の横にある非正規の入り口から校舎の中へ飛び込んだ。そのまま調理室とは反対側に廊下を進み、昇降口にたどり着く。



下駄箱で靴を再び履いて、自販機に向かう。



水道のある場所からはちょうど死角になる、自販機の陰。そこに立ったまま体を縮めてもたれ掛かっている少女がこちらに気づいた。



「よう」



「あ、進だ」



きょとんとした顔で進を見た有華は、何かに安堵したような清々しい微笑を口元に作った。