今朝の有華は登校して早々に他の女子たちに囲まれ、いつものように場を明るく盛り上げていた。
その集団は廊下側、進は窓側であきらや相川たちと話し込んでいたので、話す機会はなかった。というか、たとえ話す機会があっても有華は進を無視するような気がしたし、進も有華に話しかけるような博打をわざわざ卒業式前に打つことはしなかっただろう。
ちなみに卒業式の答辞は、当然のごとく有華がやった。元生徒会長だし、勉強はできるし、顔もいいし、申し分ない人選だ。ただし学年主任に殴りかかったという前科持ちではあるが。
答辞自体、有華にしては型にはまった面白くもない文章構成で、去年、一昨年と比べてそう代わり映えしなかった。
その言葉の端々に、進は自分との接点を探しもしたのだが、なにぶん来賓の挨拶にも劣らない退屈な文章をつらつらと棒読みするものだから、進はそれよりも睡魔と闘うのに忙しく、結局無駄な努力に終わった。
卒業式後のホームルームでも、ふたりは顔すら合わせず、花束と寄せ書きをクラス委員が担任の岡田に渡して、岡田が最後の挨拶をすると、進は陸上部の追いコンのため、急いで教室を出たのだった。
その時、有華がこちらをちらっと見たような気もしたが、それに反応することも、確認することも、調理室で待っているビッグイベントがそれを怠らせたのである。

