「ホントさ。美紅か進かどちらか選べって言われたら、俺は迷わずお前を選ぶぜ」
「大崎かあきらかどちらか選べって言われたら、俺は迷いに迷って大崎を選ぶよ」
目を合わせずに進はあきらを軽くあしらった。
「なるほど、それほど大崎が大切なら教えてやろう、俺が極秘に入手した重要機密を」
マンガだったらあきらの瞳がきらりと光るような場面である。
「俺の帝二受験に支障を及ぼさない話なら聞いてやる」
「大崎さ、今東京だって」
「東大受けてるってこと?」
「多分ね」
思っていたより、落ち着いている自分がそこにはいた。
進の説得が効いたのか、それとも有華自身の気が変わったのか。はたまた、敬太が気を回したか。
「敬太先輩かな、多分」
「誰だよ、敬太先輩って」
「こっちの話」
なんにせよ、有華は自分の進路を決めた。どんな形であれ。
「良かったじゃん、大崎」
まぁ、進に言われる筋合いなどない、と、有華は思うだろうけれど。

