スマイリー

「ときに、進よ」



揺れる電車の吊革を両手でつかんでいたあきらが、急に真面目な顔をした。



「なんだよ、あらたまって」



「大崎とはまだ仲直りしてないのか」



「お前は直球で核心を突いてくるな」



距離を置かれているだの、遠慮させているみたいだの、先程まで考えていた自分がバカらしい。



あきらにしてみれば、気を遣ったのでもなんでもなく、単にタイミングの問題だったのだろうか。



「仲直りしたのか、してないのか」



「してないよ。そもそもあれをケンカと呼ぶのかどうかすら疑わしい」



「仲直りしたいとは思わんのか」



「思うさ。おそらく俺が悪いからな。ていうか、俺がケンカしたって、お前に話したっけ」



あきらは不敵な笑みを作って、進の肩を叩いた。



「俺の情報網を甘く見るなよ」



「松本に聞いたんだろ。あいつにどこまで聞いたかは知らないけど、お前も失望したかね、俺の大崎に対する暴言に」



罪悪感はあった。ひどいことを言ってしまったという自覚も。ただ、物理的ダメージを受けたのは平手打ちを食らった進の方だが。



「俺はいつも進の味方だよ」



「白々しいヤツ」



進はあきらを無視して、英単語帳を開いた。最後の確認だ。