スマイリー

「ちわーす」



「こんちわー」



進たちに気付いた後輩たちが、声を張り上げた。挨拶は部活の基本。進たちも軽く合図をして、柔軟体操をする彼らを見守った。



「受験勉強が嫌になったんだろ。この時期はみんな現実逃避に走るからな」



少し髪を伸ばした大地は、笑いながら進に話しかけた。



「違いますよ。ちょっと息抜きです」



「息抜きって言うより、もう“毒抜き”に近いよね。前期試験も近いし、イライラしてくるもん」



「確かにそうですね、あ。敬太先輩、髪染めました?」



相変わらず柔和な笑みを絶やさない敬太の髪は、少し茶髪がかっている。



「あぁ。よく分かったね。最近染めたんだ。大地は全然気付かなかったよ」



「いいじゃねぇか。俺はお前の彼女じゃない。お前に興味ないもん」



敬太は少人数だとよく喋るようだ。無口だと思ったのはどうやら勘違いだったらしい。



「市川も連れてこれば良かったね、大地?」



敬太の言葉に、進の心臓はどきっと締め付けられた。



「あいつ土曜日バイトないしなぁ。進がいるって分かってりゃ俺だって呼んだよ」



そんな進の心情などお構い無しに、大地がだるそうにぼやいた。