スマイリー

「いいか、良く聞くんだ。東大に行ける人間なんて日本にほんの一握りだ。自分を甘やかさないでくれ。大崎に実力があるからこそ、私たちはここまで頼んでいる」



3年部の教師の中には、うんうんと頷く連中もいた。松野はやはりと言うか、我関せずといった顔で、日下部を冷たく眺めていた。



岡田は困ったように有華と日下部の顔を交互に見比べていた。その情けなさといったら、進に帝二大受験を提案したあのときの岡田からは想像もできないほどだった。



「それは先生方の都合でしょ。あたしは頭の良い大学に行くために勉強してきたわけじゃない。自分の行きたいと思った大学に受かるように勉強してきたんです。もちろん、この高校の知名度を上げるために勉強してきたわけでもありません」



硬い表情のまま、有華はきっぱりとそう言った。日下部はため息をついて、それでも有華に話しかけた。



「…大崎。君は西京でとどまるレベルではない。何度も言うが、人生がかかっているんだ。岡田先生は君の好きなようにやらせたいと言っているようだが、この不況では西京といえど就職も厳しい。君には世界に羽ばたく才能だってある。才能を無駄にするな。君には自覚が無さすぎる」



「……」



有華が黙った。黙ったが、その目は一層冷たく、日下部を刺すようににらんでいた。