薄い頭髪がトレードマーク、3年学年主任の日下部は負けじと有華を見下したように、ふんと鼻を鳴らした。
「こちらだって何度も言っているだろう。これは一生を決める選択だ、大崎。後悔してからでは遅いんだぞ」
「後悔なんてしません」
「いいや、する。東大を受けるんだ、大崎」
「日下部先生」
意を決したように、岡田が前に出た。
「あの、大崎は西京で部活に…陸上に打ち込みたいと」
「黙っていて下さい」
あっけなく引き下がる岡田。岡田はまだ30歳を越えたばかりの若手だ。公務員の悲しきサガだろう。仕方ないことだ。
「陸上?それは西京でなければできないのか。東都大にも陸上部くらいある」
「…先輩が誘って下さっているんです」
華奢な左腕が、微弱に震えているのが見えた。有華は静かに話をしているが、逆に不気味だ。
“爆発の前兆…?あの大崎が、まさかね”
進の存在はいまだに誰にも気付かれない。それほど職員室内の空気が張りつめ、教員たちの視線が有華たちに釘付けだったということだ。

