「あー、でもこれ帝四の過去問だろ。帝四って帝二よりレベル高いよ、確か」
「それにしたって、数学すら6割も越えないんだぞ。センターもギリギリなのに、はやまったかな。俺なんかが帝大とか」
机に突っ伏して、進はぼやいた。あきらはそれを見て、苦笑した。
「昨日帝三の数学で8割とって“いけるかもしれない”とか息巻いてただろ」
「それはそうだけど…」
あきらは身を乗り出して、進の後頭部を睨み付けた。
「俺の代わりに帝ニを倒してくれ。俺もホントは行きたかったんだからな」
あきらは法学部志望で、安全策(と言うとあきらは怒るが)で西京を受験する。金銭関係で県外も私大も、浪人もNGとされているあきらにとっては苦渋の決断だったろう。
「…分かってるよ。ちょっと弱音吐いただけだから。任せとけ」
進は先ほど手も足も出なかった白紙の英語の答案と問題を取りだし、再度回答を始めた。
それを見たあきらもにやりと笑って、赤い表紙の問題集に取り組み出した。

