要するに、どれも価値観次第だと言いたいのだろう、と進は思った。150人いるのだから、そのうち50人は100位以内に入れない。その50人の内にいる翔一にとって、100位以内と言うのはまさに東大を受けるくらい難しいものなのだ、と。
「例が極端すぎるとは思いますけど」
ぶっきらぼうにそう言った進を見て、敬太はにこやかにうなずいた。
「まぁ、大元は変わらないから。分かってくれて良かった。だけど、進は多分大事なことを考慮に入れてないよ」
「大事な事…何ですか」
「それじゃ」
「ちょ、ちょっと待って、軽く謎なところ残して行かないでください」
進に背を向けて歩き出してしまった敬太を、進は慌てて呼び止めた。
呼び止められた敬太は進の方を振り返ると、人差し指をピンと立てて、こう言った。
「翔一の、陸上部をやめたくない、っていう気持ちだよ」

