「次のテスト頑張ればいいだろ。大丈夫。100位なんてすぐだ」
「何?」
翔一が顔を上げたその顔をしっかりと見ないまま、進は繰り返した。
「100位なんて…」
その瞬間、ゴツっと鈍い音が校舎に響いたかと思うと、目の前を星が5、6個飛んで見えた。同時に背中は硬いコンクリートにいやというほど打ち付けられ、視界はオレンジの空をとらえた。周りを歩いていた生徒はうわっ、とかきゃあっ、とか色々な声をあげた。
「頭良いお前に分かってもらおうなんざ思ってねぇよ」
翔一の顔は怒りにひきつっていたが、それはまた、どこか悲しそうでもあった。
「俺だって…」
握りこぶしを震わせながら、翔一はまた何か言おうとした。それを進は仰向けのまま、殴られた頬を押さえて眺めているだけだった。
「…ごめん」
結局それだけ言うと、翔一は西門に向かって歩き出した。他の生徒に見られているのを感じたが、進は立ち上がる事ができなかった。
「…なんで」
怒りよりも驚きが先んじて、進は追いかけることも殴り返すこともできず、そもそも起き上がることすら忘れてただ仰向けに倒れていた。

