「俺、大学で何かやりたいとか、そういうのないし。とにかく上を目指したい、って岡田さんにも言った。何をやるかは、大学行って見つけるよ」
「…進」
「大崎が西京に行きたいなら、教師の意見なんて聞かなくていい。東大は、行きたいやつに行かせりゃいい」
それだけ言ってから、進は有華の頭から手を離した。
「んじゃ」
振り返らずに、進は歩を進めた。以前にも有華には西京行きの理由をはぐらかされていた。気になりはしたが、無理に聞くのも嫌だった。
有華と話すと、決断できる自分がいた。決断を伝えることで、覚悟できる自分がいた。有華が行きたいならもうそれでいい。そう思えた。
「進っ」
「何?」
振り返ると、有華は立ち上がって真剣な顔で進を見ていた。
「あたし、あたしが西京に行くのは」
「言いたくないなら言わなくていいって」
有華はうつむいて、つらそうに顔を手で覆った。
「大崎?」
「…敬太先輩が西京にいるから」
小さな声が、確かに進に届いた。

