「何、今の“あ”ってのは」
「なんでもない。こっちの話だ」
顔を覗きこんでくる有華に対して、進は視線を地面にやった。
「なんでもないってコトはないでしょ。あからさまに目ぇそらしちゃって」
「いいんだよ。なんでもない」
「気になるなぁ」
有華は疑り深げに進をにらむ。
有華の視線は痛いが、本当のことを話しても誰も得をしない。
進は誤魔化しを決め込んで、話を続けた。
「で、どうしたらいいかな。もし落ちても、西京なら後期募集で受かりそうなんだけど」
「どうしたもこうしたもないよ。あたしも同じようなことで悩んでるんだから」
有華の答えは、全くもって的を得ていた。仮に有華がいい答えを持っていたとしたら、それをまるまる自分に当てはめればいい。
「…確かにそうだな」
そう言ってしまうと、進は言葉を繋げられなかった。
それに呼応するように、有華もにわかに口を閉ざした。

