スマイリー

今にも壊れそうな古くさいストーブでも、教室に入ると廊下よりは断然暖かい。



というか空気が悪い。一酸化炭素中毒でクラスメイトに犠牲者が出るのは進としても本意ではないから、そのまま戸を開けっ放しにして向かいの窓まで直進し、半分だけ開けた。



「進ーっ、何すんだよ」



「換気、換気。すげえ空気よどんでるぞ、この部屋。5分だけ我慢しろ」



冬休み前まで有華の隣の席だった相川の文句を、進は冷静に受け流した。その声が少々大きかったのか、教室で自習していた10人程のクラスメイトはぞろぞろと立ち上がり、窓や後ろの引き戸を開けていく。



ひんやりした空気が勢いよく流れ込んでくる。思わず体を震わせた進は、背面黒板のそばの席に座っているあきらの姿を見つけ、そこに向かって歩を進めた。



「すごい統率力。クラス委員に向いてるんじゃないか?」



「うるさいな。お前次面談らしいぞ、あきら。俺さき帰るから」



「へぇい、了解」



窓際の最後尾の席を陣取りながらひとりだけ換気を手伝わなかったあきらは、面倒臭そうに腰を上げ、開け放しの引き戸からたらたらと出ていった。