「帝二大…ですか?」
「うん。前島の実力なら決して不可能じゃないと思うが。英語さえ克服できれば…」
「英語…」
「そう。今日が1月21日だろう。前期の試験まで1ヶ月。間に合わなくはない」
力強く岡田が答えた。その目は進を乗せようとしているような表情でもなく、自分をちゃんと信頼した上で自信をもって薦めてくれているように感じた。
「センターの出来からして、後期募集で試験を受けても西京は経済学部なら安泰だと思う。前期で帝二勝負してもいいんじゃないか」
岡田の熱意が進の全身に伝わって、体温がぐっと上がった気がした。進は帝二を考えたことなど1度もなくて、帝二のボーダーラインなどは全く調べていなかった。
「俺、センター足りてるんですか」
「うん、ギリギリでね」
そう言いながら岡田の指差したパソコンの画面を見ると、進の点数は帝二大のボーダーラインをわずかに越えていた。
「…明日また話そう。ゆっくり考えて」
画面を見たまま固まってしまった進を苦笑気味に眺めて、岡田は話を終わりにした。
予想だにしない帝二の名前の出現。
決めていた進路の揺らぎを感じて、職員室を出るその足は、なぜだか重かった。

