スマイリー

結局、年明け頃からクラスメイトの松本美紅と付き合い出していたことをあっさり白状したあきらは、これまたあっさりと、進よりも50点も多く得点していた。



「お前ホントに尋常じゃないほどとってるな。ウチの学校のレベルなら、理系合わせても5位以内には入ってるぞ、きっと」



進の言葉を受けると、あきらは肩をすくめて苦笑した。



「理系を含める意味はないよ。受けてる教科が違うし、受ける学部も違う。競ってもしょうがないだろ」



そうさらりと言ってのける親友は、学年では有華に次ぐ程の勉強家。ただ、そういう素振りを全く見せないせいか、頭が良さそうにはちょっと見えない。



「そういやあきらはどこに行くんだよ、大学」



「西京の法学部かな」



「え。あきらも西京だったのか?てっきり帝二大かと思った」



進は椅子ごと後ろに振り向いて、プリントに教科ごとの点数をさらさらと記入していくあきらに尋ねた。



帝二大とは帝国第二大学のこと。国公立、私立を合わせても県内では一番難易度が高い。戦前から日本に存在した7つの帝国大学の一角を担う大学である。



「俺、法学部志望なんだよ。帝二だとこの点数でもセンターギリギリだし。私立は学費高いから無理。同じ理由で浪人も県外もエヌジー。西京でも法学部なら先生も文句言わないだろ」



「安全策ってヤツか」



「お前な、その言い方トゲあるぞ」



進の額を指でつついて、あきらが頬を膨らませた。



「そんな顔しても可愛くないぞ。松本は何て言うかしらないけど」



途端にあきらの顔が赤くなるのが面白かった。



「だ、だから美紅のことは悪かったって言ってるだろ」



「冗談だ。本気にするなよ」



「さっきからケンカ売ってないか、進?」



「うっ、いてて…」



頬を強めにつねられた進は自分の机に向き直り、再び自己採点を始めた。