スマイリー





大地といえば、進は昨日夢の中で会っている。進と藍の仲を一番面白がってからかっていた、陸上部の副リーダー的存在。



“あいつさー、ホラーが全然ダメなのよ。1年の学祭の時に、お化け屋敷に連れてかれてさ。何てこたぁない、高校生が作るちゃちなお化けをえらい怖がってよう”



吹き出しそうになるのを必死でこらえながら部室で語る大地を、進はぼんやりと覚えている。なぜだか大地とふたりきりだったので、余計に頭に残っているのか。



“お化け役の生徒に…く、く、K-1選手も顔負けのミドルキックをぶち込んでさぁ…は、は、や、やばい、ハラ痛ぇ”



大地はいつも藍につっかかっては決まって痛い目に遭っていたが、練習には真面目で人望も厚かった。



“あいつに一人暮らしは無理だよなぁ。幽霊苦手な上に、極度の寂しがり屋だもん。え?ばーか。分かるんだよ、俺にはさ。ああいうタイプには他人ばっか盛り上げていざ家に帰ると孤独で泣いたりするヤツが多いんだ”



帰宅のため制服に着替えながら話を聞いていた進は、このときある仮説を立てたのだった。



大地は、藍が好きだ。



未立証のまま、大地も卒業してしまったけれど。