スマイリー

ぴったりとくっついたままの藍の右腕が、かたかたと揺れていた。マイナス5℃の予報は間違いなかったようで、身を寄せ合っても今夜はかなり冷える。



「別れたこと、誰かに相談しました?」



藍は地面を睨んだまま首を横に振った。



「…やっぱり」



藍はそういう人なのだ。なんでも自分で解決しようとするタイプ。頼られるが故に、自分は相談できない。鬱になりやすいサラリーマン第一位。



「それに、彼氏がいなくなって下宿が寂しいから帰りたくないんでしょ。ひとりでいるの嫌いなくせに、強がっちゃって」



「別に嫌いじゃないし強がってない」



進と目を合わせることなく、藍はなおも反抗的に呟いた。だが、藍がひとり暮らしが苦手なのは間違いないのだ。



「藍さんが幽霊嫌いなの、もう割れてますから」



「え!嘘。誰に聞いたの?」



久しぶりに藍は進の顔を見た。目が少し赤くなっている気がしたのは、見間違いだということにした。



「ずっと前に、大地さんが言ってました」



「大地…あのバカ次会ったら殺してやる」



低い声で、覚えてろよ…とばかりに藍は悪態をついた。