スマイリー





「…大丈夫ですか?電車とか」



「多分ね。10時30分くらいのヤツに乗れば、余裕で帰れるわ。明日は土曜でバイトもないし」



時間は9時をまわって、暗い公園を街灯が照らすのみとなっていた。時間が遅くなるほど寒さは本領を発揮し、吐く息が白いのはもちろん、手袋をしていても手がかじかむ程だ。



「寒いわね。冬らしい気候だわ。今年の秋は暑かったから、まるで秋がなかったみたいじゃない?」



「あぁ…確かに。秋らしい気候は短かった気がしますね」



藍の言うように、10月の頭まで続いた茹だるような暑さは、それから1〜2週間やわらいだかと思うと一気に寒くなり、あぁ、秋だなぁと感じるような日はとても少なかった。



「冬がこんなに寒いせいで、国民は地球温暖化に気付かないのよ。まだ大丈夫、大丈夫って思ってるうちに、取り返しのつかないことになるんだわ」



両手を口元に当てて、藍がもごもごと文句を言った。薄いピンクの暖かそうな手袋の隙間から、白い息がふわりと漏れて、空気中に淡く溶けていった。



もう一組カップルがやってきて、あいている最後のベンチが埋まった。



端から見たらカップル率100%。藍はどうか知らないが、進の居心地は実に悪かった。