12月の外気は頬を刺さんばかりの冷たさで、ニット帽を揃いでかぶったカップルも、黒スーツの上にさらに黒いコートを羽織るフレッシュマンも、制服にマフラーを巻いただけという塾帰りの男子高校生の集団も、誰もが早足で、駅やバスターミナルに吸い込まれて行く。
これだけ人が集まって、これだけの速さで流れているのに、なのに冬の寒さはこの喧騒や熱気や、建物から漏れる暖かさや光に負ける様子を微塵も見せようとせず、ただ淡々とこの街から温度を奪い続けている。
でもそれがこのあたりの、この季節の当たり前の風景だから、当たり前に進も藍も、誰も不思議には思わない。
完全に冬だ。顔に吹き付ける風の冷たさに、藍と共に店を出た進は妙な確信を得た。
結局なにも言い出せないまま、夕食は終わってしまった。
当然と言えば当然。本来、告白というのはターニングポイントのようなもので、するかしないかの分岐点に誰もが立ち止まり、座り込み、思い悩み、時にはその道を引き返し、また分かれ道に戻ってきて、結局なにもしない方を選んだり。
とにかく行動に移しがたいものである。相手が藍のような美人だと、進はなおさらそう思う。
しかも、進がしようとしている告白にいかなる意味があるのかは、進自身もはっきりとは説明がつかない。
好きな人に告白するのならまだ分かりやすい。藍は、“好きだった人”だ。一応。今はどうかと聞かれたらそれはまた別の話で、有華のことはどうなんだと聞かれれば、それもまた別の話で、となってしまうのだけれど。
とにかく、“昔、好きだった”ことを伝える根拠としては、夢のお告げが大した後押しにならないことなんて、とんでもなく明白だった。
店を出てすぐの歩道を数メートル並んで歩いたところで、藍が大きく伸びをして、ああ!と大きな声を出す。
それに気付いて進も思考を止める。考えても仕方ない。
言えなかったものは言えなかった。
すまん、俺自身。
これだけ人が集まって、これだけの速さで流れているのに、なのに冬の寒さはこの喧騒や熱気や、建物から漏れる暖かさや光に負ける様子を微塵も見せようとせず、ただ淡々とこの街から温度を奪い続けている。
でもそれがこのあたりの、この季節の当たり前の風景だから、当たり前に進も藍も、誰も不思議には思わない。
完全に冬だ。顔に吹き付ける風の冷たさに、藍と共に店を出た進は妙な確信を得た。
結局なにも言い出せないまま、夕食は終わってしまった。
当然と言えば当然。本来、告白というのはターニングポイントのようなもので、するかしないかの分岐点に誰もが立ち止まり、座り込み、思い悩み、時にはその道を引き返し、また分かれ道に戻ってきて、結局なにもしない方を選んだり。
とにかく行動に移しがたいものである。相手が藍のような美人だと、進はなおさらそう思う。
しかも、進がしようとしている告白にいかなる意味があるのかは、進自身もはっきりとは説明がつかない。
好きな人に告白するのならまだ分かりやすい。藍は、“好きだった人”だ。一応。今はどうかと聞かれたらそれはまた別の話で、有華のことはどうなんだと聞かれれば、それもまた別の話で、となってしまうのだけれど。
とにかく、“昔、好きだった”ことを伝える根拠としては、夢のお告げが大した後押しにならないことなんて、とんでもなく明白だった。
店を出てすぐの歩道を数メートル並んで歩いたところで、藍が大きく伸びをして、ああ!と大きな声を出す。
それに気付いて進も思考を止める。考えても仕方ない。
言えなかったものは言えなかった。
すまん、俺自身。

