注文したパスタやらハンバーグやらがテーブルに並びだすと、藍は待ってましたとばかりにフォークを掴む。
凛とした顔立ちに子供の表情を浮かべたそのギャップのなんと愛らしいことか。嬉しそうに食事を口に運ぶ姿を見ていると、やはり誘って良かったという気分になる。
もちろん、彼女のそんな顔を見るためだけにわざわざ夕食に誘ったわけではない。ちゃんとした、というか、理由はあるのだ。進なりの。
“進が答えを聞くべきなのはこの『あたし』じゃないでしょ”
頭のすみに引っ掛かっていた言葉。進の意識が夢の中の藍に言わせたメッセージ。
俺にどうしろと。
文句を言う相手が誰あろう進自身というのは、なんとも張り合いがない。
あの夢は予行練習?
今日が本番?
今の自分の気持ちは?
有華への気持ちは?
…俺にどうしろと?
自分への問いかけがループするなかで、藍との会話は他愛ない、当たり障りない、俗にいう世間話に終始せざるを得ないのが息苦しい。

