あの時、何も言わないで藍を送り出した自分を、進は無意識下で責め続けていた。
後悔していたのだ。
そうでなければこんな夢、見るはずがない。
偽りの空間を用意してまで、進の意識は何をさせようとしているのか。
それを考えれば、簡単に結論は浮かび上がってくる。
藍が用意した“弟”という枠組みにすっぽりはまってしまったせいで、この答えを藍に提示することが、当時の進にはどうしてもできなかったのだ。それが進の後悔。
進の意識がなぜセンターの差し迫った12月に、高2の春の夢を見せているのかは進の知るところではない。
いつもこころの片隅にあった後悔の念が積もり積もって、創世夢なるものを見せるまでに膨れ上がったのがちょうど12月だったのか。
また、藍とふたりっきりで長時間を過ごした中で、一番進の意識が記憶していたのがこの、春の部室だったのか。
同様、進の知るところではない。
だが行動の時が来たことは分かる。
もちろん、ここでの行動が現実世界に与える影響は全くない。自己満足といえばそれまでだ。
とにかく今がその時だと進の意識が声を張り上げている。張り上げるままに、口を開く。
「好きだったんだ、ずっと」

