スマイリー

「で、どうなんですか。心当たりは?」



「ないって言ってるじゃない。てゆうか、ないってことにしとくわ」



「何ですか、それ」



さらに聞き出そうとして、進はこれが夢であることをまたも忘れそうになった。そうだ、冷静になれ。



夢は夢でしかない。これだけ現実味があっても、進の意識が記憶を頼りに作り出したまやかしであることに変わりはない。



ならば、当時藍に好きな人がいたかどうかとか、もともと県外の大学志望だったかどうかなんて、それについて進と藍が話したことがない以上は、この場で明らかになるはずはないのだ。



たとえ今、藍がなんらかの答えを口走ったとしても、信憑性はゼロ。それは現実世界では何の意味もない。



そんなことを考えながらも、進は焦り出していた。理由はふたつ。



この夢から本当に覚めることができるか不安でしょうがないこと。



そして、もし夢が覚めるとすれば、経験上、もうあまり時間がない。夢なんて、体感ではせいぜい十数分続けば長い方だ。それなのにまだ何も行動を起こしていないこと。



羅列してみるとなんだか矛盾していそうな考えが同時に進を焦らせる。