進は藍の方へ駆け寄って、散らかった雑誌を拾うのを手伝った。
「心当たりでもあるんですか」
拾いながら、少し意地悪く聞いてみた。
「ないわよ」
「ウソ。藍さんはウソつくと目が泳ぐから」
行き場がなさそうに藍の大きめな瞳がうろうろと右から左に流れたのを、進は見逃さなかった。
「むう。目ざといな、進は」
「長い付き合いですから」
目の前で進と一緒にしゃがんでいる藍が、突然進の額を右のこぶしで小突いた。
「わっ…いたぁっ。何するんですか」
「なんか見下されてるみたいでムカついたから」
藍の癖、行動パターンだ。気に入らないことがあったり、話を聞かない後輩がいたりすると、右のこぶしで額を小突く。
数週間前、有華の家での勉強会の帰りに大学生の藍からもらった弱パンチが進の脳裏にくっきりと浮かび、それが今までとはまた違った懐かしさを進に感じさせた。

