スマイリー

「未来から来たって、こんな薄汚い部室になんの未練があったわけ?」



くすくす笑いながら藍が尋ねた。つくならもっとマシな嘘をついてよ、とでも言いたげな顔をしている。



「自分探し」



「バカ?進ってバカ?勉強はできるのに」



「俺、3年になると成績下がるんですよ」



「ははっ。ありがちなキャラ設定ね」



藍は部室の入り口そばにあるパイプ椅子にどかっと座った。それに合わせてきめの細かそうなセミロングの黒髪がふわっと揺れた。



「ねぇねぇ、あたしは何をやってるの?そのとき」



地球上の不思議に対して「なんで?なんで?」と、両親を質問攻めにする小学生みたいに、好奇心を瞳に満ち溢れさせた藍が無邪気に尋ねる。



「県外の大学に進学して、好きな人とデートしてるところをあきらに発見されて、久しぶりに俺と会ったときにそれを俺に問い詰められる」



バサバサっと何かが落ちる音が藍の方から聞こえて、進が後ろを振り返ると、進が拾って机の上に積んであったはずの雑誌の束が地面にまたも散乱し、藍がそれを拾っているという光景が目に入った。



「…何してるんですか」



「ご、ごめん」



意外にも素直に謝る藍に、進は肩透かしをくらったような気分になる。大抵は「こんなところに積むから悪い」とかなんとか言って、怒り出すのが進の知っている藍だ。