進の記憶では、このまま自分は片付けを終え、藍に一言声をかけ、ジョギングに出発するはず。そして今日は藍とそれ以上会話することなく、それどころか、藍と顔を合わせることすらなく帰宅する。
それではなんだかもったいないと、進に訴えかけるのは、他ならぬ進の意識。
どれだけリアリティーが増そうと、夢は夢。藍の夢を見るということは、藍のことを脳が意識しているということだ。
では、今こんな夢を見ているのはなぜか。何かの意味があるように思えてくる。得体の知れない使命感が、進の心にまとわりついてくる。何かしなければ、という、漠然とした使命感が。
何をしていいかは分からない。ノーヒント。何が正解かも分からない。何もしないのは不正解だ。それだけは確信が持てる。
ただ、これだけノーヒントということは出題者が自分自身である以上、自分の思った通りに行動するのが多分正解だ。
この場面で当時何もしなかったことを後悔したからこそ、今この夢を見せられている、と考えれば納得もいく。
無理な解釈だとも思ったが、どうせ夢なんだだからと考えると、気持ちもいくらか楽になった。

