部屋中に散らばっているテーピングや、コールドスプレー、雑誌を片っ端から拾い上げ、黙々と所定の場所に戻していく。
藍はそれを手伝うでもなくただ眺めている。
会話はない。この状況を進が気まずいと感じるのは、今も昔も(とは言っても歴史的には全く同時期のことだが)変わらない。
進自身の感覚では1年半前、たったいまから計算するとつい数分前のことだが、進は男子部の部員たちに尋問を受けていた。
その尋問内容は、もちろん藍について。
大地を始めとする部員たちには進を本気でいじめようなんて思っている輩はもちろんいない。進は割と外面が良くて、先輩からも後輩からも、それなりに慕われているのだから。
恋愛事情について話したり、問い詰めたり、冷やかしたりするのは、一高校生として別に異常なことではないし。
大地たちが冗談半分なのは進にも分かっているのだから、彼らの尋問に進も当時は「またまたぁ」とか、「そんなんじゃないですよ」とか、無難な常套句を選んで返答し、別段気にかけたりすることはなかったと思う。
問題は、藍がそのやりとりを聞いていたということだろう。それが気まずいのだ。
藍はそれを手伝うでもなくただ眺めている。
会話はない。この状況を進が気まずいと感じるのは、今も昔も(とは言っても歴史的には全く同時期のことだが)変わらない。
進自身の感覚では1年半前、たったいまから計算するとつい数分前のことだが、進は男子部の部員たちに尋問を受けていた。
その尋問内容は、もちろん藍について。
大地を始めとする部員たちには進を本気でいじめようなんて思っている輩はもちろんいない。進は割と外面が良くて、先輩からも後輩からも、それなりに慕われているのだから。
恋愛事情について話したり、問い詰めたり、冷やかしたりするのは、一高校生として別に異常なことではないし。
大地たちが冗談半分なのは進にも分かっているのだから、彼らの尋問に進も当時は「またまたぁ」とか、「そんなんじゃないですよ」とか、無難な常套句を選んで返答し、別段気にかけたりすることはなかったと思う。
問題は、藍がそのやりとりを聞いていたということだろう。それが気まずいのだ。

