スマイリー

「進、あんたはいいわ」



「え、でも」



「まだ無理しなくていいから。今日復帰したばっかりで、いきなり練習しちゃだめ」



そう言われて初めて進は右膝に違和感を覚えた。まるで脳がその時の痛みをたった今思い出したかのようだ。そうだった。進はこの日まで、2週間ほど部活を休んでいたのだ。



「捻挫って、骨折よりタチが悪いのよ?痛みがとれてからもしばらくは様子みないと。それに、2週間も休めば体力も落ちるし。別のトコ怪我したらどうするの?次の試合に間に合わせたいなら無理しちゃだめ。とりあえず部室が汚いわ。簡単でいいから片付け。そしたら今日は軽くジョギングだけにしときなさい」



感覚がリアルすぎて、寒気すら覚える。夢なんだから、極端に言えば今いきなり藍に抱きついたりしてもお咎めはないはずなのだ。



だが、そんなことできるはずがない。もうこれが現実で、そのまま明日、明後日と高2の進の生活は続いて行きそうだとすら感じるのだから。だって、藍のセリフは完璧なまでに過去と同じなのだ。



藍の表情、声色、ジェスチャー、一挙手一投足すべてに強烈な既視感を感じる。何度も言うが、リアルすぎるのである。