スマイリー

「この点数なら、二次頑張れば西京でも可能性は五分五分ってとこか。これでE判定のレッテルともおさらばだよ」



そして、まだまだ厳しいけれど、なんとか西京に受かることができれば。



有華と同じ大学に。



そんなことを考えるたびに、進の脳裏にあの笑顔がよぎる。大崎有華の、屈託のない笑顔。



にやけ顔とはならないまでも、無意識で半開きになった口元がだらしない。



「なんてぇ顔してるんだ、進よ。西京に受かる想像するだけでそんなに口角緩めるもんかね」



あからさまにしかめっ面をするあきらの反応は、おそらく正しい。



有華の志望校が西京であるとは、あきらも予想していないだろう。



だから進が実は有華の笑顔を思い浮かべて意識を虚空に儚く翔ばしてしまっているということは、「西京」と「大崎有華」を結びつけられないあきらには分かるはずもないのだ。



ゆえにあきらの目には、我が親友が、センター試験対策の結果に過度の自信を持ち、おこがましくも県内随一の有名大学に既に受かった気分に浸りきっているように見えても仕方がない。



「まぁ、点数が上がるのは良いことにゃ違いない。キープしないと意味ないぞ。おい、進?…だめだなこりゃ」



あきらが進に愛想を尽かして、話しかけるのをやめたとたん(進はそのことにも気づいていなかったが)、強烈な睡魔が進を襲った。



進にはそれに抗う術もないし、抗う理由もない。進の上の瞼と下の瞼は、政府の反対もなく、国民の大きな混乱もなく、無事に平和条約を締結した。



すぐに進の意識は虚空の彼方に飛翔し、そのまま進の制御不能な異空間に吸い込まれていった。夢幻の彼方へ。