坂井くんには、やっぱりかないそうにないや。



「待って、坂井くん」



そう言って走り出すと、ポケットの鈴が、ちりんちりんとなった。



◇◆◇◆◇◆

「はぁぁ、今日は上出来!」



今日はいつもより、30分早く起きた。

髪の調子がよくて、時間もあったから巻いたらいつも以上に上手く巻けた。

出汁巻き卵が、いつもより2回多く巻けた。



「芽依ちゃんの出汁巻き卵、本当にうまいね!」

「ありがとう、遥くん」

「芽依ちゃん今日の髪型カワイイ!」

「ありがとう、未来くん」



朝からみんなに褒められて、今日は本当に良いことがありそうだ。



「全く、良いことがあっても悪いことがあってもうるさいんだな。」



せっかく良い気分になっていたのに、坂井くんに鼻で笑われた。



「千春さんの炊いたごはん、おいしいですよ。」

「えへ…彼方くん、ありがとう。」



お母さんがぽっと顔を赤らめながら、食器を洗う。