王子様と甘い生活


◇◆◇◆◇◆


「芽依!委員会行こ。」

「うん、ちょっと待って。」



放課後になり、委員会に行くために荷物をまとめる。


よしっ、あとはロッカーに体育着をしまってっと…



「吉沢さん」

「えっ…?」



名前を呼ばれて振り向くと、坂井くんが立っていた。



「さっ、坂井くん!」

「手、出して」

「えっ?」

「良いから早く」



坂井くんに急かされて、びくびくしながら手を出す。
なっ…何?



「父さんが渡し忘れたって。」



ちゃりんっと音が鳴って、手のひらに冷たいものがのった。

手を見ると、星や鈴のチャームがついた鍵がのっていた。



「えっ…鍵?」

「それじゃあね。」



それだけ言うと、坂井くんはスタスタと教室から出ていった。
ほんっと、家でもないけど、学校ではさらに愛想がない。



「芽依、どうかしたかー?」



悠真に呼ばれて、急いで鍵をポケットにしまう。


「ううん、何でもない。今いくね。」



鍵についた鈴が、優しくりんっと鳴った。