「芽依ちゃん、このダンボール運べる?」

「あっ、はい!」



そういって、和人さんからダンボールを受け取る。
あっ…結構重い!



今日はついにやってきた引っ越しの日。

あぁぁ…
とうとう始まるんだ、他人との同居生活。


緊張の1つである坂井くんにはまだ会っていない。

食事をした次の日、学校で会った坂井くんは普通だった。特に親しげに話し掛けてくるわけでもないし。
まぁその方が私も良いけど、同居するとなると…。



「芽依ちゃん、大丈夫?」



重いダンボールを抱えて、ふらついた私に遥さんが声をかけてきた。



「全く、おやじのやつ、女の子にこんなもの持たせて…ごめんね。」

「いえ…大丈夫ですよ」



そういって笑い返すと、遥さんは私の持っていたダンボールを受け取ってくれた。



「これは、俺が運ぶから芽依ちゃんは自分の荷物運んで良いよ。」

「えっ…でも。」

「お兄ちゃんに任せなさい!」



そういって、遥さんはにっこり笑って家の中に入っていった。


さわやかな上に、優しい。それに、頼りになる。私の想像していた『お兄ちゃん』ってかんじだ。