「あのね、芽依。」

「ん?」

「やっぱ何でもない。」


春が少し過ぎて、桜の木が緑になったある日。
珍しく、お母さんがランチに行こうと言い出した。

しかも、高級ホテルの中にあるフレンチレストラン。

いつもなら渋って嫌がる車の運転を珍しく嫌がらずにした。

ランチの前に買い物に行こうと言い出し、珍しく私にワンピースを買ってくれて、着替えさせられた。

珍しく「すっごいかわいい!」って褒め言葉付きで。