(怖いよ・・・。)
僕の声が、頭の中に響く。
(死にたくない・・・。助けて、誰か・・・。)
体が冷たくなって、死に満たされていく・・・。
感触も思いも、全てが鮮明に蘇る。                  

人生最後の日、あの日僕は、いつも通り学校に行き、受験勉強に備え静まり返った教室で一ヵ月後の受験に備えていた。
部活が終わった3年生は、帰りのホームルームが終わるとすぐに下校になる。
その日も例外ではなく、たいした用もなかった僕は、2,3人の同級生を連れ、見慣れた家々が立ち並ぶ帰り道を歩いていた。                 
分かれ道で友人と別れた後、僕は見てしまった。あの残酷で、血なまぐさい事故現場を。
そして、目の前が真っ暗になった。

                                  
その後のこと、僕は何も覚えていない。
自我を失い、感情を失う度に、僕の記憶は薄れていく。
(あれ・・・?僕の名前・・・)
頭が真っ白になる。
気が狂いそうだ。                          
(なんだっけ・・・?)
すると、聞き覚えのある声が、静かに鳴り響いた。
「気がついたか。それが、死者の定めだ。時が立ち、残りわずかな魂の輝きが刺激される度、記憶も感情も消えていく。」
「な、なんなんだよさっきからっ!魂の輝きとか・・・そもそも、ホントに僕が死んだのかさえ・・・。」