(所詮はみんな、一度死んだ魂じゃないか。いくら殺したって、罪は問われない。」
「殺せ。」
(殺せ。)
僕の思いと、冷血な声が重なった。
戸惑う魂の中で、一人の悪魔があざ笑う声が聞こえた。
そして、小さくか弱い人間の魂は呟いた。
「狂ってる・・・。」


そして、死後の世界で生き残った僕らは、一時の平和に身を案じていた。
ここにいる魂に、生きていたころの名前を覚えている者はほとんどいない。
だから、自分で名前を決め、その名前を名乗っている者、かろうじて覚えている本名を名乗っている者の2種類に分かれる。
僕は1の魂であり、覚えていない自分の名前を「ユウ」とつけた。
だが、特に名乗るほどの親しいヤツもいないので、まだ誰も知らない、僕だけの自己満足でしかないのだが・・・。
そこで、ふと、視界に入ったのは、ここに来てはじめて見た大樹・・・に、寄りかかって泣いている少年だった。
以前から、彼に少し興味があった僕は、軽々しく彼に話しかけてみた。
「そこで何してるの?」
少年はしばらく黙っていたが、すぐに、どこか遠くを見るような視線を、僕に向け直して呟いた。
「・・・判んない。」
散々もったいぶっておいて、あまりの返答の簡潔さと曖昧さに、僕は少しイラついた。
・・・てか、額に青筋が立ちそうなくらいムカついた。