ー竜の涙!!-
しかし、僕が気づいた時はすでに遅く、幾つかの魂が、竜の涙に向かい走り始めた。
そして、誰よりも先に竜の涙を手に入れ、高く掲げたのは、20代半ばの青年だった。
しかし、その時、僕は確かに見た。
勝利を確信し、満面の笑みを浮かべていた青年の顔が、苦悩と恐怖に引きつった表情へと変化される瞬間を。
とっさに走り出していた僕だが、その青年の強張った表情を見るなり、その場に立ち竦んだ。
カラン・・・と、竜の涙が地面に落ち、転がる音。
それをかき消すようにして起きた、幾つかの悲鳴。
青年の体は、火竜と同じように、粒子となって消えた。
血溜りを残して・・・。
僕の・・・僕たちの恐れていたことが、今始まった。
死後の世界での殺し合いが。