「うぎゃぁっ!!」
火の海だと思っていた落下点は、なんと火竜の背だった。
禍々しい色の炎に包まれた翼は、美しく、そして神々しく輝いていた。
僕は、火竜の上から、赤い扉が言っていた、灼熱の世界の景色というものを眺めていた。
赤黒い炎が溢れるようにそこらじゅうが、竜の翼と同じ炎に包まれ、中には溶けかかっている岩もあった。
その岩陰に、幾つかの魂が目に入った。
火竜、その魂目掛け、一直線に飛んでいく。
(ダメだ・・・。そんなことしたら・・・。)
「と、止まれェェッ!!」
叫びながら僕は剣を抜いていた。
その剣の矛先は、火竜の頭部。
炎の光に反射し、剣が赤く煌いた。
ブスッと鈍い音を立て、赤い光は生々しい液体に塗りつぶされた。
これが初心証明人間のものだったら、僕は今頃失神していただろう。
でも、ここは違う。
ここは戦場なのだ。迷った者から死んでいく。
・・・と、何かのマンガで、昔読んだ気がする。
だから・・・。
生き返るためなら・・・僕は・・・。
「なんだってするんだっ!」
火竜の分厚い皮から、勢い良く剣を引き抜き、僕は火竜の背を跳び下りた。
再び火竜に向き直り、剣を構える。
そして、足の震えを吹き飛ばそうとせんばかりに、僕は走り出した。
生まれてきてこのかた、筋力なんてまるで無い非力な足を、少しでも火竜の頭まで近づければ、なんて弱気な気持ちで、僕は地面を蹴って跳んだ。