『降りしきる雨の中、女は彼の名を呼び続ける。

もう戻って来ることはないであろう彼の名をー』






「うわぁぁんー」


私の鳴き声に呆れた顔を此方に向けた彼はまだ洗い物中だ。


買った本人である私が
まったく使っていない
真白のエプロンが
妙に目に痛い。


「正太ぁぁぁぁ!!!」


画面の中の彼女と同じように泣き叫べんで、
皿を洗うその背中に
抱きつけば


俺の名前は裕太だ。


と冷静なツッコミをしながら振り返り
私の涙をエプロンで荒っぽくぐしぐしと拭く。


『よくもまあドラマで
こんなに泣けるなあ。』


「だって正太がフロリダに転勤して次はアフリカでその次はカナダで最後は天国にっ・・・!」


『お前が大慌てでシャワーを浴びた5分間でタイにも転勤してた。』


今更ながらの新事実に再び涙が溢れる。