翌日、アナが身支度を済ませて隣のシュエラの部屋の戸を叩くと、同じように身支度をすっかり終えたシュエラが嬉しそうに顔をのぞかせた。
しっかり睡眠がとれたのか、白い肌はみずみずしく陶器のように滑らかで、その端正な顔には柔らかい微笑みを浮かべており、アナはあまりの美しさにシュエラの顔を直視できないほどだった。
「お、おはよう」
『おはようございます。
よく休めましたか?』
アナの動揺など気づくこともなくシュエラは無邪気な微笑みを浮かべている。
「うん…疲れていたからよく眠れたよ」
なかなか寝付けなかったことは言わず、アナは笑顔を見せた。
「今日はシュエラの師匠を探しに行くんだよね?」
シュエラは頷いたが、表情がほんの少しだけ不安げにかげるのをアナは見逃さなかった。
「…あたしの用事は急いでないから、先に師匠を探しに行こう。
マリの街ならあたしも少しはわかるから、案内できるよ」
アナが明るい声でそう言うと、心細そうに揺れていたシュエラの瞳がわずかに見開かれる。
『いっしょに行ってくれるんですか?』
アナが当然だと言うように笑って頷くと、シュエラがあからさまに安堵の表情を浮かべたので、アナはなんだかくすぐったいような満たされるような気持ちになった。
懐いてくる小さな子どもや動物を守ってあげたくなるような…これが母性と言うものだろうか。
大の大人の男にこんな風に思うのはちょっと問題かもしれないな、とアナはこっそり苦笑した。
