『もう、二度と。今度こそ本当に、二度と声を出さないと約束します。
だから、ここに、いさせてください…』

長い髪が地面に付くほどに深く頭を垂れるシュエラに、男は首を横に振ることで答えた。



どうすることも出来ず、戸口の陰からただ見守っていたアナだったが、一人、非難に晒され震えるシュエラが堪らなく、恐る恐る口を出した。


「さっきの地震はこの人のせいだけじゃないんです。そんな一方的に──」


 初対面の人間、しかもこんなに怒りを露わにしている人に意見することに、アナは声が震えてしまうのが自覚できた。

それでも一方的に責められているシュエラの悲痛な様子を見れば、黙ってはいられなかった。

欠片を持っていたのは自分だ…アナは責任も感じていた。


しかし、視界の端でシュエラが狼狽したようにアナを振り返ったのがわかり、自然声も途切れてしまった。気まずい沈黙が辺りを支配する。


村人の男が呆れたような溜息を吐く。

よそ者の言う事などまったく意に介していない様子だ。


「あんたは…この村の人間じゃないな。
誰だか知らないが我々の問題に口出ししないでくれないか。


シュエラ。
とにかく、早々にこの村から出て行ってくれ」


一番前にいた男が重い口調で宣告を突きつけ、やがて村人達はもと来た道を戻っていく。



灯りが遠くなるまで戸口に立ち尽くしているシュエラの後ろで、アナは呆然としていた。

突然の出来事に、どうすることもできなかった自分の無力さに苛立ちも込み上げる。