アナはふと、そんな叔父とウーダンの様子に、小さな疑問が湧いた。

アナが知る限りでは、叔父はもともと寡黙な男であったし、余り人付き合いも好まない。しかも口を開けばぶっきらぼうな物言いなので、寄ってくる人間も少ない。

しかし、さっきから二人の様子をみる限りウーダンと叔父はずいぶん親密に見える。父の知人というだけの間柄ではなさそうだとアナは気付く。

「ウーダンさんは、叔父さんとは昔からよく知る仲なんですか?」

いまだ不機嫌そうに眉間にしわを寄せている叔父を横目で気にしながら、アナは好奇心からつい聞いてしまった。

「ああ、そりゃあ…。

先の戦争の頃は、叔父さんの細工はおえらいさん達の中で人気があってな。武具の細工なんかに引っ張りだこだったのさ。
それで叔父さんは武具の修理の依頼があればモルガの砦まできていたんだ。
俺や、お前の親父さんの隊がいた『モルガ渓谷』だよ。そこで、叔父さんには色々と世話になったんだ」

アナはウーダンの話を聞きながら、少しずつ昔の事を思い出した。
父が亡くなった『モルガ渓谷の戦い』のときに、叔父は仕事でよくモルガの砦まで出向いていた。
皇帝や重臣などの位の高い人間の武具の細工に、腕のいい職人で近隣の村に住んでいた叔父に白羽の矢が立ったらしい。

叔父がモルガへ行けば、父の様子を知ることができる…まだ少女だったアナは留守を預かる心細さを忘れるほど、叔父がモルガへ行くたび心を踊らせていた。