「きゃーっ」
入学式そうそう遅刻する。あたし倉越雪音。今日から中学生です。
「よっ、雪音。相変わらずノロマだな。今日から中学生だっていうのに朝寝坊でもしたか?」
こいつは中村樹。小学校5・6年と同じクラスだった中村はやんちゃで口が悪くてお調子者なんだけど‥
「あとでおぼえときなさいよ!中村っ」
中村はあたしの好きな男子なのです。

「あ、雪音やっときた」
「雪音ー」
友人の真由美と瑞穂と菜々が待っていた。
「もうクラス替え見た?」
はぁはぁ。息がとまらない。
「雪音うちらとは違うクラスだよ」
「えー!?」
クラス替えの結果は1組・瑞穂、菜々。2組・真由美、大沢、中村。3組・雪音である。
「そんなぁ‥」
友達とも好きな人とも違うクラスなんて。ショックでたまらなかった。真由は大沢くんと同じクラスか。いいなぁ。
「残念だったね、雪音。中村と違うクラスで淋しいでしょ」
瑞穂が見透かしたように言う。
「そんなことないわよ。中村の顔みないですめばせーせーするわ。」
「オレだってお前みたいなバカと違うクラスでラッキーだぜ」
突然中村が現れた。
「バカとはなによ」
「そのままだろ」
中村と雪音のケンカは日常茶飯事である。中村の前だといつも素直になれない雪音。あたしは中村が好きだけど告白なんて絶対にできない。だって今の関係を壊してしまうのが怖いから。このままケンカ友達のままでいい‥。こうやって中村のそばにいられるなら。

はぁ‥新しいクラスやだなぁ。トントン。雪音の肩を誰かがたたいた。誰?と後ろを振り向いた。
「ねぇ、よかったらお友達にならない?」
「え、うん」
「私、加藤翠。よろしくね」
「あたしは倉越雪音。よろしく」早速お友達ができたー。

「翠ちゃん、オレ翠ちゃんと同じクラスで嬉しいよ」
「オレもオレも」
「よかったらメルアド教えて」
男子たちはほぼみんな翠に夢中である。翠ちゃんってばそんなにモテるんだ。すごい。