「ふっふっ…そうかそうか。十九になったか。……もうすぐで私の息子だなぁ楓くんや」
「え…いや…」
ところで父様は…本当にあたし達を結婚させるつもりなんだろうか?
そりゃあ確かに、かっくんなら藤峰家を継ぐ者としてふさわしいと思う。
当主となるのは、唯一の嫡子であるあたしだけど、会社を継ぐのはあたしと結婚した相手と決まっている。
実質ウチを動かすのはその人だ。
故に、結婚相手に求められるのは器量。
人としての器の大きさ。
それでなきゃ、世界のトップには立てない。
こう見えて父様だって、本当はすごくやるときはやる人なんだ。
じゃなきゃ今頃、日本、フランスを中心に、世界の経済は崩れているだろう。
それに父様はかっくんを妙に気に入っているし、「息子がほしい」と常々言っていた。
本気…かもしれないけど…ねぇ?
「それよりまお、顔色がよくなったな。表情が明るい。やっぱり楓くんパワーか…ふっ。おとおさんさみしいっ」
あらやだ。
なに言っちゃってるのよ~♪
父様がかっくんが来れるように計らってくれたんでしょ?
「あ、そうそうそれとー…」
「ん?」
落ち込んだ風を見せた父様だったけど、すぐに思い出したように胸ポケットを探り出した。
「ちょっとおいで真裕やい」
「?」
ちょこちょこ寄ってみると、ペンを差し出された。
「名前書いて」
「なまえ?」

