「あ~んっ! だから言ったのにぃ…。かっくん~…」
はあ…? また“かっくん”かよ?
なんなんだよ一体。
さっきまでの『藤峰真裕』はどこに行った?
拍子抜けせずにはいられない。
それほどに寂しそうで子供みたいな表情で、切れた弦をつつくマヒロだった。
「くくくっ…」
抑えているような笑い声に振り向くと、あのマヒロと仲良さげだった五人組の一人だった。
アイツも日系か…。
『……ハッ…。…す、すばらしい演奏でした。さすがはマヒロさんね! これ以上ない模範になりました』
呆けていた講師が我に返ったように手を叩いた。
それにつられるように、室内が拍手で湧き上がった。
「……ええー…。どうしろと…?」
そんななかでも、なぜかマヒロの声は俺によく聞こえた。
透明な声をしているからだろうか。
『さ、席に戻って』
促されてようやくほっとした顔をし、戻ってきた。
それから先はもう……授業なぞにはならなかった。
『マヒロ! あなたやっぱりさすがね。すんごいわ!』
『リジュ』
『いや~俺は知ってたよ。君の素晴らしすぁあ!? いってぇ…ハディのバカ…。俺まだセクハラ発言してないのに…』
『する気だったことが問題なのよ』
あの五人組から始まり、教室中がマヒロに詰め寄った。

