『そーよねっっ。じゃ、お願いね模範演奏❤』
も……はん?
もはん? ……模範?
……いやいやいやいやいや。
そういうのって先生がするもんでしょ。
なんであたし?
激しくかぶりを振りながら、必死で抵抗するあたし。
だが…どうも、ウィーンのみなさまには通じなかったようだ。
『さっ、はい❤』
超! 笑顔で、楽譜を手渡された。
「……ええー…」
確かにね、人前で弾くことはいくらでもあったよ?
そういう機会はいくらでも。
でもねぇ……?
「かっくんがいないのに演奏なんかできるかっつーの!!」
出会って一年、気付いたことがある。
出来なくなった演奏が出来る時は、必ずそこにかっくんがいる時。
いなければ相変わらずぐだぐだだった。
『? マヒロさん?』
唯一日本語の分かってるシュンが、必死で笑いをこらえているのが見えた。
そして……ユウキも。
ユウキも、じろっとあたしを睨んでいた。
それにむっとしてしまったあたしは…つい。
『誰も笑わないでね!』
先にそう断りを入れ、バイオリンを構えた。

