秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*


―つかつかつか


「…?」


無言で彼の横を素通りするあたし。

不思議そうに眼で追う。


ことんと楽器と鞄を置くと、そのすぐそばに置いてあった忘れ物コーナーみたいなとこから、消しゴム数個を手に取った。


―すここんっ


「いって…!」


……はい。

投げましたとも。

それがなにか?


「なにすんだよ!」


「あたしんこと気に食わないのは分かったから、もう黙ってくれない? あたしって“お金で何でも手に入るわがままなお嬢様”だからさ、気に入らないことがあると我慢ならないんだよね」


「…!」


「ごめんね“どうせなんにもできないお金持ちのボンボン”でさ。でもこれからもずっと見たくもない顔見てもらうよ。あたしは絶対帰らない」


「……」


『ま…マヒロ? どうかしたの?』


日本語だから、メイリー達には分からない。

突然消しゴムを投げつけたかと思うと、分からない言葉でペラペラしゃべり出したら、そりゃあ何事かと思うよね。


『なんでもない』


伏せ目がちにそう言うと、バイオリンを胸に抱えて席に座った。

今日は実技があるんだって。

久しぶりにバイオリンが弾ける。