「左様で…」


苦笑いをしながらそう言って、コトンとお皿を目の前に置いた。


「…? なにこのしろいの」


「はい。日本におります母に聞いたところ、風邪をひいたときは“おかゆ”なるものが一番だと」


お…かゆ?

え…今まで風邪ひいたときそんなものでたっけ?


初めて見る得体の知れないものに、恐る恐るスプーンをつけてみた。


「はむっ。……あつ」


とりあえずあつっ。

しかもやわかい。

とろとろしててやわかい。


「なんだか離乳食のようですねぇ…」


ああ、そう! それそれ!

なんかそれっぽいよねー。


「でも意外といけるね」


うんうん。さすが坂本さん。

シェフに負けないくらいの腕を持ってるだけあるよ。


「やっぱり坂本さんがいてくれてよかったな~」


「えっ…❤」


「ウィーンに来てからこっち、落ち着けるときがなかったんだぁ…。でも坂本さんといるとすごく安心できたの。ありがと」


スプーンを次々口に運びながら、視線は完全にお皿に行きながらも、気持ちは本当だからそう伝えた。


「お……おじょおさまっ……」


って……。

ええーーーーーっ。えーっ。

だああって泣いてるし。