いきなり日本語で喧嘩をおっぱじめたあたしとユウキを、メイリーはじめクラスのみんなが目を丸くして見ていた。
「あーそうでしたね。上流貴族のお嬢さんでしたね。そりゃ悪かったね」
「なによ。どうしてそんな風に突っかかるの? まおあなたに何もしてないよ」
今日初めて会ったばかりだっていうのになんで急に喧嘩腰で来られなきゃなんないの?
理不尽に思っておかしくないと思う。
「俺はあんたが嫌いなんだよ。あんたみたいに金持ちでぬくぬく育って、挙句名声まで手に入れた成り上がりヤローの日本人がな!」
「…!」
なっ……なんでそこまで言われなくちゃならないの?
それにあたし完全な日本人じゃ……い、いや。関係ないけど。
「意味……分かんない」
「はっ! 挫折を知らないお嬢さんにはなに言ったって無駄だろうぜ」
「挫折を……知らない…?」
挫折?
挫折…………って、なに?
あ、やばい。
ほんとーに知らない。
骨折の一種ですか?
いやいや…なんか違ったような。
見たことあるよ辞書で。
なんだっけ?
「……」
「ほらな、何も言い返せないだろ。事実なんだから」
そう言って、ふいっと横を向いて座った彼の横顔は……なぜか、とてもさみしそうなものだった。

