『楽器は持ってないの? 天才少女が使うバイオリン見てみたいわ』
『今日は持ってないの。それに大したものじゃないよ』
そんな大それた人間じゃないものあたし。
天才とかおこがましい。それはかっくんのためにある言葉だよ。
だってだって超すごくて超すてきで超かっこいいんだもんっ❤
「まあ確かに“超すごくて超すてきで超かっこいい”よね。ムカつくくらいにさ」
「うんうんホントムカつくくら……日本語!?」
え!? 今どっから声した?
空耳? 空耳ですか?
きょときょとあたりを見回しても、日本人らしき人はどこにもいない。
……?
「どこ見てんのさ」
「へっ……」
うしろ?
くるっと振り返ると……日系の男の子?
でも……日本人ではない…ね。
そっか。なにも日本語だからって日本人とは限らないんだっけ。
「ふーん。君が藤峰真裕か。なんかどっかのアイドルみたいだね」
「え? あいとる? …開いとる? どこが? チャックが?」
「……」
???
どこも開いてないよ。
「ハア……」
「?」

