秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*



『こらこらみなさん、座りなさい!』


パンパンと手を叩く音と共に、女性の声が響いた。

まさに鶴の一声。

みんな一斉に、自分の席に戻った。


『あとで話聞かせてね』


最後にあたしにそう言って、パチンとウインクをした彼女。

どこかりんりんに雰囲気が似てる気がする。


『えー今年から二年、あちらの藤峰真裕さんが留学生としてウチに入ります。みなさん仲良くしてあげてくださいね』


ここはオーストリア屈指の音楽校。

宝院と名を連ねる名門校だ。

あすこと違うのは、ここには色んな年代の人がいるってこと。

あたしみたいに飛び級した人とか、学校を一通り卒業した後に音楽を始めた人とか、色々いるらしい。


さっきの、りんりんに雰囲気が似てる女の子は……あたしよりちょっと年上みたいだった。


『ねェ。あなたみたいな有名人が来るのは初めてなのよ』


『そうそう。ここは名ばかりで、大したやつはいないのよ。きっと日本のホウインのほうが実力は上だわ』


隣とそのさらに隣に座っている子が、机に肘をつきながらそう言う。

でも…ちょっと納得かも。

だって…宝院にはかっくんがいるんだもんっっ❤


「…きゃはっ❤」


思い出しただけできゅんっ。

会いたいな…かっくん。


『そういえばご婚約なされたのよね? おめでとう』


『えっ?』


婚約? ……ああ、そういえば。

そんなことになってたっけ。